即決で導入が決まったDovetailプレゼン資料をシェア&解説
使いたいツールがあるけど会社が使わせてくれない...。そんな経験、ありますよね。UXリサーチも同じで、UXリサーチ専用ツール「Dovetail」は、使いたいと思っていても実際に導入できた会社はさほど多くない印象です。一方で最近私は、あるチームでDovetailを導入できました。それも即決で(!)。資料も色々工夫したので1回使って捨てるのがもったいなく、使った説明資料を皆さんにシェアします。
Introduction
「Dovetail」という、私が一番好きなUXリサーチ専用の道具があります。
UXリサーチ界隈ではみんな割と知っているSaaSですが、導入に至らない会社も多い印象です。
「ウチでは(セキュリティ的な意味で)導入は難しそうだ」
「ウチのステークホルダー(上司, 情シス, etc)は専用ツールを導入する価値を理解してくれず予算を割いてくれないだろう」
「専用ツールは周囲にとってアクセスのハードルが高くなるのでやめた方がいい」
そんな指摘や不安があるためなようです。Dovetailに限らずツール導入でよくある話ですよね。
実際私もある会社で導入を薦めたところ、そういった理由からお流れになってしまった経験があります。
一方で最近あるチームでDovetailの導入を進めたところ、そのケースでは、なんとその場で上長に導入を即決してもらえたのです。
人数も規模も大きめの会社でしたが、あまりにすんなり通ったので拍子抜けするほどでした。
そこで今日は、実際に導入を即決してもらった際に使用した説明資料をシェアし、解説します。
Dovetail使ってみたいけどウチだと導入できないだろうな という人のために参考になれば幸いです。
プレゼン, 説明
プレゼンは、プレゼンというほど大仰なものでもなく、シンプルなWeb会議で始まりました。
使った資料
自分は静的で完成された資料を作るのも使うのも嫌いなので、Notionで1つページを作って、それを使用してプレゼンしました。
使用したページ:Dovetailについて
(公開用に色々改変してますが、大筋は再利用できると思います)
解説
上記資料に凝らした工夫を解説していきます。
プレゼンの序盤でキメる
プレゼンのスタンス
導入したいツールをプレゼンする場合、たった1つだけコツがあると思っています。
まず見てほしいのは、上記資料の最初の節のタイトルが次のようになっている点です。
この話と{{プレゼン相手の名前}}さんとの関係
ツール導入のプレゼンで重要なのは、スタンスとして「使いたいんです」という意思や気持ちをプレゼンしてはいけないこと。ただのワガママに映るからです。
そうではなく「(相手に)使いたいと思ってほしい」というスタンスに立って資料とプレゼンを組み立てること。
そうすると、最初に話すべきこと、つまり資料の序盤にあるべきは、ツールの機能や出来ることややりたいことの紹介ではなくなります。
最初に来るべきはずばり、”このツールで得られるコトとプレゼン相手との関係” です。
今回はお相手が上司でしたので、ツールを入れることでその上司や彼が監督するチームの何かが──特に仕事や数字が改善することを説明しています。
資料では、上司の仕事のうち次の4つに関係があると紹介しました1。
リサーチ過程・結果の監督・確認
現在どんなインサイトがあるのか見てアイデアの材料にすること
インサイトを材料にメンバーからアイデアを引き出すこと
リサーチのレポーティングの待ち時間(が短くなること)
良くなった像のイメージを伝える
何かが改善されるとしても、それを充分理解するには口頭や文章での説明だけでは力不足です。口で言われただけでは具体的なイメージが湧きづらいですよね?
そこで、実際にDovetailでデモやサンプルを作って、そのスクショを載せています。
スクショ自体はたくさん載せていますが、最も大事なのは1枚目の画像です。最初の画像がファーストインプレッションを構築するためです。
今回選んだ1枚目は、1時間の録画のうち重要な発話箇所だけを45秒ほどで見れるよう切り抜きテーブル形式に並べたビュー(図1参照)でした2。
中盤は普通
まだページは5分の4ほどありますが、中盤には重要な工夫はありません。戦いはここまででほぼ決まります。
中盤の項目は目次で言うと次の通り。
(Dovetailを使って)何がしたいのか?
ウチにおける有効な使い方は?
Dovetailでの具体的な仕事, 作業の像
これらはDovetailの具体を紹介しているだけの普通の項目。退屈ですが、必要な項目でもあります。
プレゼンの体験ジャーニー
そして終盤では出口として、Dovetailについてお相手にどう協力してほしいのかを説明しています。これによって、スムーズに相手にボールを渡したり、単なる聞き手から検討者へと一瞬で変身してもらうことを企図しています。
ここまでの流れをジャーニーマップで簡潔に説明すると、次のようになります。
全部説明しきらない
具体は以上ですが、全体を通した工夫があと1つだけあります。
それは、相手にツッコミどころを残す という工夫です。
具体的には、ツールについて全部は説明しきらないこと。
同資料ではDovetailの具体的な機能や挙動は全く説明しきれていません。説明もスクショも体験と価値が分かるものだけに絞っていますし、その場で見せるデモも1つに抑えました。
そのようにすると、たいていお相手から質問が出ます。それに対しFAQ的に的確に答えることで、よく考えてるな, よく検討してるな という印象に繋がります。
例えば今回は次のような質問がありました。
”タグ”っていうのは、1つの発話とか切片に複数付けられるの? もし付けられるなら、どんなテーマがどれだけ関心持たれるか分かって良さそうだけど
この質問は想定し準備していたため、これに対して私はただ「はい、複数付けられます。これ良いですよね」とだけ答えました。
回答がYESであるかNOであるか以上に、しっかり質問に答えられるようにしておいたことが重要です。信頼できる印象を与えることが出来たはずです。
FAQのことを考えると、ツール導入のためのプレゼンでは、実像を写実的に伝えるより抽象度を1段高めた方が有効なのかもしれませんね。数多くある機能を30分や1時間こっきりで説明しきれるはずありませんから。
セキュリティの話
Dovetailのセキュリティレベル
さて、ここまでDovetailのセキュリティについては全く触れてきませんでしたが、実はDovetailはセキュリティ面の認証としてはSOC2を取得しています3。よってほとんどのケースでセキュリティ要件をクリアできるでしょう。
プレゼンにセキュリティの話を入れるか
ちなみに、私の場合Dovetailのセキュリティの話は資料に入れませんでした。
これは単純に入れ忘れていたからです笑
ですが、それが偶然にも良い効果をもたらしたかもしれません。
いま考えると…
今でも「DovetailはSOC2を取得しているよ」なんて話をプレゼン資料に入れようとは思いません。聞かれたらDovetailのLPを映して見せるなどするでしょう。あるいは最後のFAQページに入れる程度。
というのも、プレゼンの最初にセキュリティの話をしないということも奏功したのではないかと考えているためです。
セキュリティの話はツール導入にあたってほぼ確実に聞かれることなので最初に説明したくなります。ですがこれは避けるべきかもしれません。
なぜなら、最初にセキュリティの話をするか最後にセキュリティの話をするかで、印象が結構違うためです。
最初にセキュリティの話をすると聞き手の認識は「セキュリティはクリアしてるんだね」という程度の印象になります。
一方で最後に話した場合は「便利そうだな。使いたいな。しかもセキュリティもクリアしてるんだな」という印象になります。
微妙な差にも見えますが、”しかも”という印象は、いかにも人間の認知に影響を与えそうな材料です。
実際、即決してもらったのはセキュリティの話に至る前で、
「OK、これ入れよう」と即決する雰囲気になった後に「申請にあたってセキュリティの要件をチェックしないといけないんだけど〜」という話が出て初めてセキュリティレベルを見に行くという流れでした。
つまり、決裁者が入れるべき, 入れたいと思うかどうかに、セキュリティの話は必要無いんですね。
よって、プレゼン中にセキュリティの話をするのは印象付けを弱くし、かつ時間の無駄でもある可能性があります。セキュリティの話に時間を使うくらいなら、その時間で1つ多く良いところを紹介していいのではないでしょうか。
おわりに
Dovetailに限らずツール導入に当たっては「このツール使いたいです」と伝えるだけで肝心の検討を決裁者に任せてしまうことは避けたいものです。
意思決定を待つのではなく、意思決定をサポートする, あるいは意思決定させるんだ という意識で動くのが重要です。
そういう考えも踏まえていま振り返ると、プレゼンしている瞬間はほとんどDovetailのセールスマンになっていたかもしれませんね。
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【資料には次の4つの上司の仕事に関係がある点を入れ紹介しました】
これら4つの項目は勘ではなく、同チームにおける上司の仕事を過去/未来の両方について調べて出したもの。
【1時間のヒアリングの録画の内重要な発言箇所だけを切り取ってテーブル形式で並べたビュー】
このビューを1枚目に選んだのにはある背景がありました。
実は依然、別件でDovetailを説明・紹介したことが何度もあり、そのおよそ全てのケースでこのビューを見せた時に最も良い反応を得られることを体験していたのです。きっとDovetailの中の最も象徴的なビューの1つです。
【SOC2を取得しています】
Dovetailによる説明ページ:https://trust.dovetail.com/