なぜ発信するのか?
本ニュースレター『UXの電球』での発信は、その99%を自分で見つけた・作った・使った・実験したプラクティスにすると決めています。
これは、見ただけの情報やよく知らないことをしたりげに語るような、無責任で人を惑わせかねないことはしたくないためです。
しかしながら、こうした決め事の中で発信を続ける内に、ある時ふと思いました。
せっかくのプラクティスを、私はなぜ公開しているんだろうか?
👻発信しなければ存在しないも同じ
インターネットは、自分のアイデンティティの中核を成してきました。物心ついた頃からずっと心をウェブの世界に置いて生きてきた気がします。
多くの大人にとって単なる遊び場や怪しい場所でしか無かった時から、自分の真の安心を感じる居場所はネットにありました。
友だちと遊んでいる時、学校で勉強している時、アーティストのライブを楽しんだ時、趣味に没頭している時…。どんな時よりも、インターネットで遊んでいる時に最もアイデンティティの充実を感じました。「ウェブで活動しているこの人格こそが自分だ」と。
ウェブの世界にアイデンティティを置いているため、仕事についてもウェブに発信しないと息苦しいのだと思います。ちょっと他人事みたいな言い方ですが、過去を振り返ると、そういったインサイトなのだと思います。
存在しているからにはウェブに発信する。
あるいは発信していなければ自分が存在しない気がして、我慢できない。
そんな、ウェブで観測出来なければ存在しないも同じという関係性が、自分とインターネットの間には存在します。
🧠勉強になる
最も端的な理由は、発信することや人に教えることから得られる学びがあることです。
あるテーマについて一定程度インプットを続けると、それ以上学ぶことがないかのような「分かったような気になる」期が訪れます。
この段階は無敵感があって気持ちのいいものですが、便所の落書きやお気持ち表明程度のことしか話せない半端な評論家の状態に過ぎません。
私は自分の仕事について評論家ではなく生産者でありたいので、この段階がやってきたら長く留まっていたくありません。
発信したり人に教えたりすると、この状態からいち早く抜け出すことが出来ます。
教えるために色々準備していくと、意外に自分の知識や技術が歯抜けであることに気づきます。また、既に知っていることについても更に深い知見やプラクティスが眠っていたことに気づいたり。
これらを補うための追加の調べごとや実験によって、歯抜けになっていた部分が補強され、プラクティスはより奥深いものになっていきます。
そうやって理解を深めることで真に身につき、いざ該当する議論や問題に行き当たった時にスッと意見が出るようにもなります。
私はこの学習サイクルが好きなのです。
🤝社外にも自分を理解してもらいやすい
発信内容を見てもらうことで、自分の知見や意見やどんなモノなのか理解してもらえるというのも理由の1つです。
ただ、発信した全ての記事やニュースレターに目を通してもらうことは期待していません。むしろ直接話す際に、話のタネとして取り出してみせるといった風に活用してきました。
📦社内でのオンボーディングや確認のドキュメントになる
行っている取り組みや制度は、実施している内に当初の目的や経緯、初心が忘れ去られることがあります。あるいは当たり前になった結果、その貢献やありがたみが忘れ去られることも。
これを防ぐための方法は色々ありますが、その1つがドキュメントにしておくことです。このドキュメントの形は色々あります。
私のお気に入りのドキュメントの形は「検索すれば出る」ドキュメント。もっと正確に言うと「ググれば出る」ドキュメントです。
ググれば出るという状態は、アクセスがとても簡単です。アクセシブルであることは情報伝播のカギです。
例えば、「これをなぜやっているのか」についてメンバーが自分の記事を新メンバーに案内していたことや、採用媒体に自分の記事を載せて参照してもらうようなことが、実際にありました。
これは発信していなければ実現されなかった価値です。
こういったことは最近は企業側でも”カルチャーデック”などの形でかなり取り組みとして増えてきているように思います。
しかしながら、どんな会社でも取り組みをアウトプットする機会やリソース、戦略があるわけではありません。というより、そういった会社はまだ全然少数派です。
そこで私はどの会社においても、行った取り組みやプラクティスを会社に依存せず、自らアウトプットし続けるようにしています(許可は取りますけどね)。
🚥見つけたプラクティスが誰かの役に立てば
自分の能力や知見は、すべて誰かの知見を源流にしています。おそらく自分が参考にした知見にもさらに源流があるでしょう。
自分が出すアウトプットに、真の意味でオリジナルな能力も知見もありません。人間とはそういうものです。他の動物と違いミームを繋いでいく生物なのですから。繋いでいく内に、少しずつ価値向上したりアップデートされていくのです。
この大きな潮流の中で自分が誰かの知見から学んだのと同じように、第三者の見える場所に置いておいた学びが誰かの役に立てばいいな、と思っています。そうやって社会に返報したいのです。
だからもしこのニュースレターに気に入ったプラクティスがあったら、自由に使ってほしいですね。
💼受け容れてくれた会社へのちょっとした恩返し
自分は色んな意味で大変わがままです(私と一緒に働いたことのある人には分かってもらえるかもしれませんね)。
働き方や思想、価値観、経歴に無駄な偏りと尖りがあり、良い意味でも悪い意味でも特異な自覚があります。たいてい、何らかの社内ルールあるいは常識に引っかかります。
受け容れてもらえない会社はごまんとあります。それで特段困っていないので、治そうとも思っていないのもたちが悪いです。
そんな自分を受け容れてくれている懐の深い企業に対し、普通に働くのにちょっとでもプラスして何かお返しできればといつも思っています。
ソーシャルプルーフやチャネルになればいいな
そのお返しの1つは、自分がその会社で取り組んだプラクティスについて書くことで、企業や事業のソーシャルプルーフやチャネルとして役立つことです。
何に対してでも構いません。サービスへの関心、チームへの関心、採用募集への応募、何でもいいので、幸運にも所属する企業に何らかの価値として返ってくれればと願っています。また、なるべくそうなるようにテーマや書き方も検討しています。
この価値の大小は会社の規模や調子によって全く違いますが、自身がスタートアップやサービス, 事業を作る人間でもあるので、特にPMFまでの時期にほんの少しでもいいからソーシャルプルーフやチャネルがあると心強いという気持ちが理解できるのです。
ほんのわずかでもいい。外部リンクが1個増えるだけでも、POやPMのメンタルが保たれることがあります。
実際に自分の記事がソーシャルプルーフやチャネルとして機能したと言えるようなケースも過去にあり、継続するモチベーションを支える原体験の1つでもあります。
採用に繋がる
フリーランスとして活動していると、言われることがあります。
吉永さんの知り合いで良い人いませんか?
うん、ほんとによく聞かれます。必ず1回は聞かれます。
聞かれてパッと案内できたら格好いいんですが「探しておきますね〜」とお茶を濁すしかありません。
だって正直なところ、ちょっと思い当たった人がいたとしてもそれが良い人かどうかなんて分かりません。
“良い人”というのは噛み砕くと、能力が充分で、会社や事業に興味を持ってくれそうで、ちょうどよく転職や副業を考えていて、きちんと連絡が取れる といった像です。多少の誤差はあれど、大体そうだと思います。
閑話
自分にはあるトラウマがあります。
昔、ある会社に、あるデザイナーを紹介しました。最初は順調だったのですが、ある事情でそのデザイナーはトんでしまいました。その会社にとっては重要な事業だったので、紹介者である私にも相談が来ました。
そこで同デザイナーに連絡を試みた上で代わりの人を自分で探し、最終的なカバープランとして、どうにもならなかったら自分がデザインやります、と提案しました。心が粟立っていたのを憶えています。紹介した責任を果たさねば、と考えていました。
そして最終的には、トんだと思われたデザイナーは戻ってきました。とても安心しました。
しかしながらその後、そのデザイナーは再度音信不通になってしまいます。これには死ぬほどがっかりしましたが、それと同時にトんだ側の気持ちも理解できる状況でした。
両者に対して申し訳なさすぎて、どちらにももう私から話しかけることは出来ません。100億%の成長率を約束できる圧倒的な儲け話か何かを土産に持っていければ別ですが…。
こういった経験もあり、自分は紹介についてとても慎重です(リファラルが最強というのが常識の世の中で大変申し訳無い)。
紹介やネットワーキングは私の人生における焦点でもないので、あれほど難しいことをあえてやる理由はありません。善意や片手間でやるには難しすぎます。
閑話休題
ですが、ニュースレターなど自分の作ったコンテンツを介して当人同士が勝手に結びついてくれるのであれば、これはとても望ましい形です。やり取りもスムーズですし、私にも気苦労はありません。
つまり、私がプラクティスをニュースレターに取り上げるのは、超間接的な会社紹介であり、超間接的なネットワーキングでもあるわけです(だからといってポジショントークはしていません。あくまで最優先は役立つプラクティスであることです)。
実際に自分の投稿から採用募集への応募に繋がった案件もあり、この価値を果たすことが少しだけ出来ている…といいですね(自信なし)。
さて、私が発信している理由は以上になります。
今後もTwitterやニュースレターで発信していきます。興味がある方は、ぜひこの機会に、私のTwitterとニュースレターをSubscribeしてください🙏